初恋スコーチング【テキスト先行公開版】8

最終更新日:2023年4月18日

◆この記事は18禁です!

このストーリーは、18禁ノベルゲームにしたい作品の“テキストだけ”先んじて公開するものです。

詳細 / 目次

フリー版で公開していた範囲はそのままノベルゲームテキスト形式、そうでない追加部分は主に小説描写になっています。


授業が終わった。

明日から三連休だ。
……いつもなら嬉しいのだが、今回は、憂鬱だった。

さあ、りくと帰ろうか。

私は、手早く準備をして、りくの教室へと向かった。

りく
「あ、あかね」

りくのクラスの授業も終わっていた。
私に気づいたりくが、私のもとへ駆け寄ってくる。

りく
「ごめん、先生がさ、進路について面談するっつって」

あかね
「あ……、そうなん?」

りく
「結構遅くなるかも。今日は、先帰っていいから……」

今は、なるべくりくのそばにいてあげたいな……。

あかね
「いいよ。私、図書室で本でも借りて読んでるよ。一緒に帰ろ」

りく
「でも、すぐ俺の番ってわけじゃないし……。一時間くらいかかるかもよ?」

あかね
「いいっていいって。ちょうど本読みたい気分だったから。明日から三連休だしさ」

りく
「うーん、そう……?」

りく
「待っていられなければ、先帰って大丈夫だからな」

あかね
「うん。多分、私の教室にいるから。いなかったら、図書室かトイレかな」

りく
「わかった。終わったら、すぐ行くから」

あかね
「ゆっくりでいいよ。大切なことなんだし」

図書室で適当な本を借りて、自分の教室に向かう。

図書室は、私たちの教室の上の階。
だから、無駄足にならないよう、教室で待機しておく。

あかね
「………………」

“禁断呪いの書”、“すかっとする復讐全集”、“嫌がらせ方程式”。

……こんな本借りるなんて、我ながら病んでるわ。

でも……。

りくが良くとも、私の気がおさまらない。

吉原たかしに復讐を……。

あかね
「うわっ」

考え事をしていたせいか、教室入ってすぐの席にいた人に、タックルをかましてしまった。
というのも、ぼーっとしていて、前をよく見ていなかったのだ。

あかね
「あいたた……」

あまりにも勢いよくぶつかったため、その人もろとも倒れてしまう。
当然のごとく、持っていた本が散らばった。
それだけでなく、その人の机の上にあったものもぶちまけた。

あかね
「ごめんなさい!」

慌てて起き上がって、落ちたものを拾う。

あかね
「………………」

これ……。

……吉原たかしの写真?

まさか、ぶつかったのって……。

あかね
「…………」

よかった。吉原たかしじゃない。
うちのクラスメートだ。

……いや、吉原たかしが、なんで自分の写真を自分の手帳に挟んで持ってるのよ。
ナルシストじゃあるまいし。
しかも、全くカメラ目線じゃない……。

え……。まさか……。

ゆかに落ちた文房具を拾っている、その人を見る。

あかね
「……ねぇ……、これ、あんたの?」

「……っ!」

手帳を見せる。吉原たかしの写真が挟まれているのを、彼に確認させながら。

彼は、目にするなり、ものすごい勢いで私から手帳を奪った。

――“復讐”。

唐突に、頭にその二文字が浮かんだ。

あかね
「あんたって、吉原たかしの恋人?」

「………………」

彼は、睨むだけで、何も言わない。
しかし、その目は、『関係ないだろ』と訴えていた。

私は、心の中でほくそ笑んだ。

あかね
「吉原たかしってホモなんだねー。いいこと知っちゃった」

「違っ……!」

あかね
「えー、だって、あんた、恋人なんでしょ。あんたも吉原たかしも男でしょ? なら、ホモじゃない」

「やめろ、誤解だ……! たかちゃんは、ホモなんかじゃない……!」

たかちゃん、か。
きっと、近しいとりまきなんだな。

あかね
「じゃあ、なんであんたは、吉原たかしの写真を手帳に挟んでんの」

「そ、それは……」

あかね
「……ああ、なるほど」

あかね
「吉原たかしはともかく、あんたがホモなんだ」

「……ッ」

あかね
「そんで、吉原たかしに片思いしてんでしょ? 違う?」

「うッ……るさい! お前には関係ないだろ!」

あかね
「ぶつかったお詫びに、伝えてあげるよ」

「……は!?」

あかね
「あんたが、吉原たかしを好きだって、本人に」

あかね
「言う勇気ないんでしょ?」

あかね
「意気地なし」

よく言えたものだ。私が。

「そんなの俺の勝手だろ……!」

あかね
「なら、私の勝手で、伝えてあげるよ。吉原たかしに、『キミのことが好きな男の子がいる』ってさ」

あかね
「吉原たかしは、何て思うかな?」

「やめろよ……! たかちゃんに変なこと言うな……!」

あかね
「変なこと? え、じゃあ、吉原たかしのこと好きでも何でもないのに、手帳に写真挟んでたの? え、ちょ、怖いんだけど」

「……っ!」

あかね
「きもっ! 吉原たかしにも言っておかないと。ストーカーがいるって」

「やっ……、やめろよっ。ストーカーなんかじゃ……!」

あかね
「はぁ? 普通、恋人でもない人の写真持ち歩かないでしょ。きもいんだけど」

あかね
「おまけに、それ、隠し撮りじゃないの? うわ、盗撮じゃん」

あかね
「やばい人間がクラスメートにいたもんだねー」

先ほどに比べて、顔が青くなっている。

あかね
「あ、まさか、スパイね」

「……っ」

あかね
「おっと、図星?」

「ち、違う……」

あかね
「本当は、吉原たかしと敵対しているグループの、スパイなんでしょ」

あかね
「吉原たかしに言わないと」

私は、くるりと方向転換した。

「や、やめてくれ……!」

「たかちゃんに何か言わないでくれ……!」

きた。

私は、振り向き、表面上しぶった。

あかね
「えぇ、でも……。私、昨日彼に迷惑かけたしさ。あんたのこと伝えて、少しくらいお近づきになれたらなーって思うんだよ」

「た、たかちゃんと仲良くなりたいんだったら、俺が……!」

あかね
「吉原たかし、ってさ……。結構かっこいいよね?」

「……?」

あかね
「私、正直、昨日ものすごく悔しかったんだけど、彼の顔とかかなり好みなんだよねー」

「え……」

うーそでーす。

私がかなり好みなのは、りくの顔とかだ。

あかね
「“仲良く”していいの?」

「………………」

「や、やめろ……。たかちゃんに近づくな……」

あかね
「さっきからさー、なんで命令口調なの? 私、あんたに命令される筋合いないんだけど」

「…………」

「やめて……ください……」

あかね
「えー。私、吉原たかしと近づきたいのよ?」

「だ……だめだ! たかちゃんに何言うかわからないし……!」

あかね
「あんたは……」

あかね
「ストーカー?」

「違うっ」

あかね
「スパイ?」

「頼むからそれだけは言わないで……」

あかね
「スキ?」

「………………」

あかね
「…………ねぇねぇ」

あかね
「あんたの恋、手伝わせてよ」

「は……」

あかね
「ほら、腐女子っているじゃん……。男同士の恋愛にときめくやつ」

あかね
「私も、その気があるっていうかさ。興味あるんだよね。男同士の恋愛」

本当は、やっぱり全然興味がない。
私が興味あるのは、りくだけだ。

あかね
「だから、手伝わせてよ。そうしたら、吉原たかしに、あんたのことをああだこうだ言わないであげる」

「て、手伝うって何だよ……?」

あかね
「あんたさ、男が恋愛対象外の男を、どうやって落とす気?」

あかね
「吉原たかしに、かわいいって言われる男にしてあげるよ」

「………………大きなお世話だ」

あかね
「じゃあ、吉原たかしに言ってあげるね」

あかね
「スパイがいるって」

顔がもう、真っ青だ。
そりゃそうだ。
昨日のりくの事件は、どこかしらで見ていたはず。

りくに恥をかかせたのは、りくが、お金を払えなかったから……。
からかいも兼ねてだと思う。
あれで、からかいなのだ。

……吉原たかしに変な疑いを持たせたら、リンチは免れないだろう。

「……っ、わかったよ……!」

「お前の言うこと聞きゃいいんだろ……!」

あかね
「そうこなくっちゃ」

あかね
「じゃあさー……まずさー……」

あかね
「脱いでよ。全部。ここで」

「………………は?」

あかね
「からだが資本だから~……」

あかね
「はだか見せて、すっぱだか」

「ふっ……ざけんなっ。なんでそんな……!」

あかね
「じゃーいいよー。吉原たかしに言っちゃうだけだから」

「や、やめろ……!」

あかね
「じゃあ、脱いで、見せてよ」

「…………………………」

あかね
「男でしょ。脱ぐくらい、どこでだってできるでしょ」

『りくだって脱がされたんだから』とは、絶対に言わない。
単なる復讐だと確信させ、りくのことが好きだとばれてしまうから。
そうなってしまっては、立場が逆転してしまう恐れがあるから。

あかね
「一応、今は、ほかに誰もいないしさ」

「……ほ、本当だな……?」

「本当に、脱いだら、たかちゃんに……」

あかね
「私からは、あんたのこと言わない」

あかね
「でも、脱がなかったら……」

「…………くそっ」

ネクタイを緩める。
脱衣が、始まった。

ネクタイを外し、ブレザーも前を開く。

勢いがよかった。やけくそだろう。
脱ぎ捨てるように、ブレザーも机に置く。

「…………、………………」

しかし、勢いは、すぐになくなった。

上半身がカッターシャツ姿になったところで、手が、ぴたりと止まったのだ。

あかね
「……ブラジャーでもつけてんの?」

「つっ、つけるわけないだろ!」

あかね
「じゃあ、証拠見せるためにも脱ぎなよ」

あかね
「じゃないと、ブラしてるって噂流すよ」

「でたらめにもほどがある噂じゃないか……!」

あかね
「でたらめかどうかなんて、実際に見ないとわからないじゃん」

「……くそっ、脱ぎゃいいんだろ、脱ぎゃ……」

上からボタンを外していく。

白いシャツの向こうは、どこまで外しても肌の色をしていて、
ブラジャーはもちろん、下着をつけていないようだ。

「これで……、満足かよ……」

胸板が露わとなった。

肌の色とほとんど変わらない乳首は、外気に曝されている。
ブラジャーは、していない。本当にしていたら、怖いけど。

あかね
「すっぱだかって言ったよね。下も脱いでよ」

「変態女……!」

あかね
「吉原たかしの写真をこそこそ持っている変態に言われたくないなぁ」

あかね
「じゃあ、すっぱだかじゃなくてもいいよ。とりあえず、ズボン脱いでよ」

「………………くそっ」

“くそ”としか言っていないな、この人。

そういえば、この人、何て名前だったっけ。

仮にもクラスメートだし、見覚えはあるけど……、名前覚えていない。

いいや。
“クソメガネ”ってことにしておこう。

あかね
「ねー、まだー?」

あかね
「早くしないと、誰か来ちゃうよー?」

クソメガネ
「………………」

クソメガネ
「こんなことして、楽しいのかよ……」

あかね
「別に……、楽しくはないかな」

あかね
「ただ、アドバイスする者としては、あんたを把握しておく必要があるからさ」

クソメガネ
「頼んじゃいないだろ……!」

あかね
「え? 頼んだんじゃないの?」

あかね
「だって、吉原たかしに何か言うのはやめてって、あんたお願いしてきたよね。だから、私にアドバイスを頼んだんじゃない」

クソメガネ
「………………、くそっ!」

やっぱり、クソメガネだ。

クソメガネは、ベルトを緩める。
その手は、やたらとちんたらしている。

あかね
「誰か来るの待ってない?」

クソメガネ
「………………」

あかね
「まぁ、確かに、誰か来たら……、特に先生とか来たら、中断せざるを得ないけど」

あかね
「ただ、その代わり……、誰か来た時、私が脱げと言ったところまで脱ぎきれていなかったら、吉原たかしにあることないこと言うからね」

あかね
「それでもいいなら、私、いつまでも待つよ」

クソメガネ
「……くそ……!」

クソメガネは、ズボンを下ろした。
とても悔しそうな表情で、ズボンを、下げた。

音を立てて、ズボンがゆかに落ちる。
そのズボンをどうすることもできず、足は、硬直。

ただし、堅く握りしめたこぶしが、ぶるぶると震えていた。

ちょうど、右のこぶしと左のこぶしの高さ、その中心に、一番隠しておきたいものがしまわれているのだろう。

あかね
「……………………」

不思議だった。
目の前に、パンツ一丁の異性がいる。
なのに、私は、とても冷静で冷酷で、ひどく落ち着いている。

りくので慣れた?
……いや、もし、目の前にいるのがりくならば、こんなに平然としてられない。
だから、全然慣れてなんかいないはず。

あかね
「トランクスじゃん」

クソメガネ
「な、何かおかしいかよ……」

あかね
「おかしいよ」

クソメガネ
「何がっ……」

あかね
「………………………………」

クソメガネ
「……くそっ、もういいだろ!」

あかね
「いや、勝手に終わらせないで」

あかね
「そのトランクスも脱いで」

クソメガネ
「はあ……!?」

クソメガネ
「お前……、全部脱がなくていいって……!」

あかね
「靴下と上靴は、脱ぐと足が汚れちゃうからね。履いたままでいいよ」

クソメガネ
「…………結局全裸じゃないか……!」

あかね
「そんなことはないよ」

りくは……、靴下すらも履いてなかったな。

だから、お情けでもあるのに。全裸と同じなんて。
なに言ってんだ、このクソメガネ。

あかね
「脱いでよ」

あかね
「誰か来ちゃうよ」

あかね
「あと一枚じゃん」

あかね
「ここまで脱いだの、無駄にしたくないでしょ」

あかね
「誰か来ちゃったら、水の泡だよ」

クソメガネ
「………………」

薄い布地。
足に食い込むこともないその下着は、空気も取り込んでいるのであろう。

そして、まぁ……、こういうことを言うのもなんだが、もし、私がしゃがんで、見上げたら……。

中身、見えるよね。

昨日のりくも、そういえばトランクスだった。
穿く前に、中身散々見ちゃったから……、あんまりそういう考えもなかったんだけど。

りく、泣いてしまった。
服を着たら、それまでこらえていたものが決壊したかのように、泣いてしまった。

りくは、さゆりちゃんと肌を重ねたこともあっただろう。
それは、私とお風呂に入った時に比べたら、随分と最近の話。
だから、成熟したはだかを見られるのは、初めてじゃないと思う。

でも、昨日は、泣いてしまった。

二人きりで愛し合うならいざ知らず、大勢の中、自分だけはだかで、好奇の視線に晒された。

つらかっただろう。
とてもつらかっただろう。
よく泣き顔まで、周囲に見せなかった。褒めてあげたいくらいだ。

こいつもすっぱだかにして、泣かせないと。

クソメガネ
「………………」

クソメガネは、こぶしをぷるぷる震わせながら、じっとしている。

私は、ため息をついて、スカートのポケットに手を突っ込んだ。

そして、携帯電話を取り出す。

あかね
「まあ、まずは一枚」

クソメガネ
「っ……!?」

カシャッ

無機質な音が、教室に響いた。

クソメガネ
「な……、なに撮ってんだよ……!」

あかね
「大丈夫だよ、安心してね。あんたが私に対して変なことしなければ、誰にもこの写真見せないから」

あかね
「成長記録って感じ? 筋肉のつき具合だとか、ウエストの太さだとか。アドバイスの上で、必要になってくるからさ……」

あかね
「あんまり筋肉なさそうだねー」

クソメガネ
「………………」

あかね
「じゃあ、その最後の一枚も脱いでくださいな」

クソメガネ
「いい加減に……、っっ……!」

クソメガネが、セリフの途中で唇を結ぶ。
その顔は、青ざめている。

私は、おやと思ったが、すぐにその理由を理解した。

足音が、聞こえる。
いよいよタイムリミットが近づいてきたようだ。

足音は、こっちに向かってきていた。
……複数人のようだ。

クソメガネ
「は……はっ……」

クソメガネの呼吸が乱れ出す。

あかね
「誰か来る前に、そのパンツは脱ぐの。もう時間がないことわかるでしょ?」

あかね
「脱げなかったら、吉原たかしに色々言うから」

足音が聞こえなくならないよう、声のトーンを下げて、釘を刺す。

クソメガネは、うつむき……、握りしめていたこぶしを、トランクスのゴムに添えた。

「でも、先輩は、私のこと恋愛対象として見てないもんー」

「そんなの、先輩に直接聞いてみないとわかんないじゃん」

「わかるよー」

女子二人組……か。

あかね
「女でよかったね」

クソメガネ
「いいわけあるか……!」

「どーしてそんなこと言えるのよー」

あかね
「女は、吉原たかしと繋がりないこと多いでしょ?」

「わかるものはわかるの」

クソメガネ
「ていうか……、もし、俺がここで脱いだら、俺もそうだが、お前もやばいだろ……?」

「わかんないってー」

あかね
「あー……」

「だって……、まるで、気があるみたいじゃない?」

あかね
「その時は、見せつけられたって言うから」

足音が、どんどん近づいてくる。

クソメガネ
「くそっ、俺を悪者にする気かよ……!」

あかね
「じゃあ、ほら。ちらっとでいいから、見せてごらん」

「気があるんでしょー?」

クソメガネ
「は……?」

あかね
「二人が来る前に、おちんちん見せてごらん」

あかね
「パンツ下げなくとも、それで、いいからさ」

「だってぇ……」

あかね
「早く」

「早くいっちゃいなよー」

あかね
「はやく」

「はやくはやく」

あかね
「はやく――」