初恋スコーチング【テキスト先行公開版】30-21b

最終更新日:2023年9月20日

◆この記事は18禁です!

このストーリーは、18禁ノベルゲームにしたい作品の“テキストだけ”先んじて公開するものです。

詳細 / 目次

フリー版で公開していた範囲はそのままノベルゲームテキスト形式、そうでない追加部分は主に小説描写になっています。


あかね
「………………ふぅ」

外の空気が、気持ちいい。
異次元から生還したって感じだ。

しかし、待っている場所も特にないな……。

あかね
「……あ」

自動販売機だ。

ちょうどいい。何か飲もう。

あかね
「……んー……」

今日の私は、銀行で下ろしたお金しか持っていない。
つまり、財布には、お札しかない。

仕方ない。
何もせず、こんな店の前でただ待っているだけなのも目立つ。
千円札を崩すか。

私は、千円札を入れた。
千円以上の飲み物はないので、全てのボタンが点灯する。

気分があまりよくないし、無難にお茶にしておくか。

私は、ブレンド茶を選んだ。

ガコン

ブレンド茶が出てくる。
正確に言えば、“ブレンド茶だけが”出てきた。
おつりは、出てこない。

千円を入れ、500mlのブレンド茶を一本買ったから、まだ自動販売機のボタンは、点灯を続けているのだ。

あかね
「………………」

クソメガネは、お金を持っていないと言っていた。

別に、いい。
必要なお金は、私が持ってきた。

……しかし、飲み物は?

のど、かわくよね。

あかね
「……………………はー……」

買ってやるか。

でも、何が好きだろうか。

さすがに、飲み物まで意地悪するつもりはない。
嫌いなら飲まないだろうし、無理矢理飲ませても吐くだろうし。
それは、もったいない。

……普段のあの人のこと、私全然知らないな。

例えば、りくなら……。

りくは、炭酸は苦手。
でも、炭酸好きな人って多い。私も好きな方だ。
苦手な方が珍しい気もするが、りくなら炭酸は考えられない。

ココアやカフェオレが好きだ。甘いやつ。
でも、果汁飲料ではないタイプが好き。

反対に、ブラックコーヒーなんか絶対に飲めない。
苦味が強いのは、りくは無理。
それゆえか、緑茶もあまり好きではない。

紅茶も好きなんだけど……。この自販機では売っていない。

そうだ。
もしりくなら、ココアだな。
季節を考えると、まだアイスがいい。

……しかし、それは、りくの場合だ。

ココアなんか、種類にもよるけど、だいたい甘ったるい。口もべたべたするし。
甘いのが苦手だったら、地雷かも。

じゃあ……?

炭酸。
好きな人が多いけど、りくみたいに苦手な人もいる。

コーヒー。
飲まない人は、本当に飲まないからなぁ。
かくいう私も、コーヒーは飲まないから、たくさん種類があると、余計わからない。

果汁飲料。
ぶどうとみかんがある。……だめだ。
どのフルーツが好きか知らない。さらにハードルが上がる。

水。ミネラルウォーター。
無難すぎる。
それに、他の飲み物よりちょっと安いからなぁ。けちったと思われるのも癪だ。

ここは、もう、これしかない。

ピッ ガコン

チャリンチャリン……

おつりを返却させて、小銭を財布に入れる。
財布もしまい、出てきた飲み物を取り出す。

ブレンド茶。
もう一つ……、ブレンド茶。

お茶なら、まあ飲めるだろう。
緑茶ではないし、飲みやすいとは、思う。

それに、もし嫌がられたら、私が飲めばいいしね……。1l。
……まあ、ぬるくなっても飲めるから……。

私は、一つブレンド茶のふたを開ける。
一口、飲んだ。

あかね
「……はぁ……」

冷たい液体が、のどを通って体を下りていく。
涼しげな感覚に、ほっとする。

クソメガネに、店前の自動販売機の前にいると、メールしておこうか……。

そう思いながら、また一口飲むと、店の自動扉が開く音。
クソメガネくんだ。

クソメガネは、辺りを見回し、私を見つけると、こちらに来た。

クソメガネ
「ほら、レシートと、つり……」

あかね
「いいよ、持っときな」

あかね
「それより、はい」

クソメガネ
「……?」

あかね
「のどかわかない?」

クソメガネ
「……俺に?」

クソメガネは、目を丸くしている。
受け取ろうとは、してくれない。

はずれだっただろうか……。

あかね
「嫌い?」

クソメガネ
「いや……、俺、金持ってないんだって。つりの二円しかない」

てことは、2998円のお買い物をしたのか。

って、そうじゃなくて……。

あかね
「いいよ、これも私のおごり。別に、変なものとか入れてないから、よかったら飲んで」

クソメガネ
「……そうか……?」

クソメガネは、ようやく受け取ってくれた。

……………………。

クソメガネ
「……なに見てんだよ」

あかね
「えっ? あ……、嫌いじゃないかなって」

クソメガネ
「別に……、この銘柄は飲んだことないけど、味の想像はつくし……」

クソメガネは、ふたを開けて、一口飲んだ。

クソメガネ
「普通だから……さ、別に」

あかね
「そっか、よかった」

少し休憩をして、私たちは、次の目的地に向かった。