初恋スコーチング【テキスト先行公開版】3

最終更新日:2023年4月18日

◆この記事は18禁です!

このストーリーは、18禁ノベルゲームにしたい作品の“テキストだけ”先んじて公開するものです。

詳細 / 目次

フリー版で公開していた範囲はそのままノベルゲームテキスト形式、そうでない追加部分は主に小説描写になっています。


翌日から、生活に変化が訪れた。

友人
「あかね……、上羽うえばくん、吉原グループに目ぇつけられたらしいよ」

あかね
「え……」

友人
「なんか、とんでもない額のお金請求してるらしくて……。さっき、『一気に返すのは無理だから、毎日五千円ずつ払え』って……」

毎日五千円?

バイトの時給は、高くても千円くらいだよね。

つまり、ハードワークを毎日五時間はして、ただ働き同然にお金を取られるってこと?

授業もあるのに。りくは、吹奏楽部にも所属してるし……。

本業である学業に必ず拘束される時間、およそ十時間。
五時間バイト。
二十四から十五引いて、九時間。

宿題だってある。予習だってしなくちゃ。
ご飯を食べる時間もお風呂入る時間も寝る時間も必要で……。

いや、バイトって、日払いのものって、少ないよね?
そもそも、日払いだったら、ほぼ一日働かないといけないんじゃ……。

まず、りくは、週末にしかバイトをしていない。
それも、一つのバイトで……、飲食店のホール。時給1000円超えてたっけ?

それを増やすにしても……。
……無理じゃんか?

あかね
「私、様子見てくる」

友人
「やめなって! あかねは、上羽くんの弱みになるよ!」

友人
「吉原のことだし、絶対あかねをだしにして、さらに無理難題言うって……!」

あかね
「でも……!」

りくがまた殴られたりするのを、見たくない。

失恋で、ただでさえ精神的に参っているのに。
体まで傷ついたら……!

友人
「わかったよ。あたしもついてく」

友人
「ただ、様子見るだけにしなよ? 絶対火の粉降りかかってくるから」

あかね
「うん、ありがと……」

たかし
「五千円だよ、五千円。俺の親友は、今外に出れない大ケガしちゃってんだって」

たかし
「大切な時間と健康を損なわせた責任が、お金でちゃらになんの。悪かないっしょ」

吉原たかし。東仲一、二を争う不良だ。

でかい図体は相手に否応なく威圧を与え、さらに声は爽やかときた。
そのギャップが、相手に畏怖さえも感じさせる。

私やりくとは違うクラスだが、その悪名は、東仲中で轟いている。

りく
「う、うん……」

たかし
「じゃ、はい。五千円。俺がちゃんと届けるからさ」

りく
「さ、さすがに、高い……よ……」

たかし
「高い? なら、親御さんに相談してみなよ」

たかし
「でも、上羽くんが、同級生に大ケガ負わせたって説明すんの大変だよね~。きっと親御さん、ここに連絡してくるよ」

たかし
「多分東仲中に広まるし、下手したら進路に影響すんじゃね?」

りく
「っ、払うよ! 払うけどっ、バイトだって探さなきゃならないし、そんなに毎日払えないからっ……!」

たかし
「あー、ノープロブレム、ノープロブレム」

「俺、いい仕事知ってんだよ。一日一万は稼げるから、安心しな」

たかし
「ってことは、毎日五千円収入が増えるってことじゃん。金で解決できて、金は稼げて、一石二鳥だね」

友人
「……絶対やばい仕事だよぉ」

友人が、ぽつりと漏らす。

りくを助けなきゃ。

でも、私に何ができるんだろう。

吉原たかしを殴る?
そんなことしても何も解決にならない。

私もお金を稼ぐの手伝う?
それじゃ、りくと同じようにカモにされるだけだ。

たかし
「どぉーするぅ?」

りくは……、頷いた。

たかし
「じゃあ、決まりっ」

たかし
「仕事の詳細は、こいつに聞いてくれよ」

たかし
「……んじゃあね」

吉原たかしが、こちらに歩いてくる。

友人が、身を縮める。
その隣で、私は、ただ立っていた。

吉原たかしが、私たちに気づく。
私と目が合う。

彼は、全てを見透かしたような瞳で、私に向かって不敵に笑った。