初恋スコーチング【テキスト先行公開版】22-21b

最終更新日:2023年9月20日

◆この記事は18禁です!

このストーリーは、18禁ノベルゲームにしたい作品の“テキストだけ”先んじて公開するものです。

詳細 / 目次

フリー版で公開していた範囲はそのままノベルゲームテキスト形式、そうでない追加部分は主に小説描写になっています。


りく
「あ、あかねー」

りくが、駆け寄ってきた。

りく
「ごめんなー、待たせたろ」

あかね
「大丈夫。こっちも、用はあったから」

りく
「あかねは、何やってたの?」

あかね
「ちょっとねー。呼び出されて」

りく
「……告白とか?」

あかね
「いや、ただ、クラスメートと、授業のことでさ」

ちくりと、胸が痛んだ。
嘘ついてごめんね、りく。

結局、クソメガネは、ガムテープを剥がして、一応見つかりにくい場所に寝かせておいた。

はだかだし、バケツもあのままだけど、意識が戻ったら、あとはクソメガネがなんとかするだろう。

ちょっと、誇らしかった。
クソメガネを泣かせたせいだろうか。
妙に、胸がすっきりする。

りく
「俺も……、心配かけたね」

りく
「吹奏楽、復帰したよ」

りく
「なんか、杞憂だったってくらい、簡単だった」

りく
「みんな、あかねと同じでさ。心配してくれてて」

りく
「気遣ってくれてんだろうけど、よかった」

りく
「さゆりはいないけど……、また、少しずつ、日常を取り戻していけるんだって、思ったよ」

いや……、クソメガネ云々ではないか。

りくが、こうして清々しい顔をしてくれれば、私は、嬉しい。

りく
「そういえば、あかね」

りく
「あかねって、夜は、東仲に来ないよな?」

あかね
「え、うん」

りく
「俺も、夜は来ないし、知らなかったんだけど……。部員のやつらが言ってて」

あかね
「なに? 幽霊でも出るの?」

りく
「俺らにとっては、幽霊の方がかわいいよ……」

あかね
「………………」

りく
「ちょっとだけ、あかねの家に寄っていい? 外じゃ、なんだか話しにくいから」

あかね
「うん、いいよ……」

久々に、りくを、自分の家に招き入れる。

りく
「あかねのお母さんは?」

あかね
「お母さんもお父さんも、まだ仕事。遠慮しなくていいよ」

りく
「うん、でも、ここでいい。とりあえず、外じゃ不安だったから……」

私としては、長居してくれても全然構わないのだが、りくは、靴を脱ごうとしない。

りくは、口を、開いた。

りく
「夜の東仲は、吉原たかしたちの根城みたいになってんだって」

りく
「防犯システムも解除して、なんか……、色々やってるらしい」

りく
「ただの噂かもしんないけど、まあ、夜外出歩くのは、何にせよ絶対危ないからさ……、あかねも、無闇に出歩いたりしないでよ? 特に、東仲の近くには」

りく
「俺は、もうあいつらには、関わりたくないから……」

あかね
「うん、わかった……」

りく
「……したかった話は、それだけ。お邪魔しました」

りくは、玄関のドアノブに手をかける。

りく
「あ、そうだ」

りく
「明日から、部活もあるからさ、待ってなくても、大丈夫だから」

りく
「ありがと……ね。ここ最近、一緒に帰ってもらっちゃって」

りく……。

あかね
「私だって、一人で帰るのは寂しいし、できればりくと帰りたいよ」

りく
「あはは、ありがとね」

りく
「…………あかねも、彼氏作ればいいじゃん」

じくり。
りくが、ナイフをふるった。

あかね
「彼氏がいても……、方向違ったら、一緒に帰れないじゃん」

りく
「ねえ、あかね」

りく
「……………………」

りく
「もし、言いたいことがあったら……、言ってね」

え?

りく
「何でも話してね」

りく
「俺は、頭が切れるわけじゃないし、頼りにもならないかもしれないけど……」

りく
「あかねが真剣に話すなら、俺も、一生懸命聞く」

りく
「だから、抱え込まないでほしいんだ」

りく、それって……。

気づいた?
私が、りくのこと、幼なじみとしてじゃなく……、一人の男の子として、好きだってこと。

りく…………。

じゃあ、言わなきゃ。
言わなきゃ、私。

絶好のチャンスじゃないか。

ああ、なんて切り出そう。

りく……! あのね……!

りく
「最近、怖いよ」

あかね
「……え?」

りく
「あかね、時々、目がすごく黒くなる。いや、もともと黒色だけど」

りく
「そうじゃなくて、なんか……、なんか、上手く説明できないんだけど……」

りく
「何かに取り憑かれているんじゃないか、ってくらい……、何も映してないっていうか……」

りく
「焦げた……ような目で」

りく
「ねぇ、何かあった? もしかしたら、最近じゃなくて、俺がさゆりにかまけてた頃からかもしんない」

りく
「最近、あかねの顔を改めてよく見るようになってから、俺……、心配で」

熱が、冷めていく。

なんだ。そんなことか。

別に、心配してくれるのは、嬉しい。
でも、そんな心配、いらない。

だから、私は、笑った。

やっと気づいてくれたのかと、あせっちゃったのにな。

あかね
「大丈夫だよ。私には、別に何にもないよ」

りく
「………………………………そう?」

あかね
「うん……」

りく
「でも、あかね…………」

その時、玄関が開いた。


「あ……、りっくん! 久しぶりね、遊びに来たの?」

りく
「あ……、いえ、ちょっと話があっただけですので……、もう帰ります」


「あら、ゆっくりしてけばいいのに」

りく
「いえ……」

りく
「じゃ……、また明日ね、あかね」

あかね
「うん、また明日、りく」

りく
「お邪魔しました……」


「またいつでも来てね、りっくん」

りくは、軽く頷いて、出ていった。
納得していない顔だったな……。

私は、母と共に靴を脱いで、上がる。


「最近また、りっくんと一緒にいるんだね」

あかね
「あ……、うん。さゆりちゃんと別れたから、さ……」


「まだ、言ってないの? りっくんに、好きって……」

りくとは、幼なじみでご近所さん。
両親は、お互いの子どものことも、よく知っている。

だから、まあ、親には、ばればれだった。

あかね
「色々あったから……」


「色々って何? 言ってみなさいよ」

公衆の面前でフェラした。

……言えるわけがない。


「りっくんは、のんびり屋さんで、鈍いところあるから、ちゃんと言わないとわからないよ」


「それでいて、優しいから……、早くしないと、また誰かにとられちゃうよ」

あかね
「わかってるよ……」

母のお小言を聞き流し、自室に向かう。

でも、フェラした一件がなくとも……、恋人にふられたのを、待ってましたと言わんばかりに、告白されて……、気分、いいだろうか?

私だったら、嫌だな……。
心が弱くなっている隙に、つけこんでくるみたいで……。

『最近、怖いよ』

……りくの、にぶちん。

先ほどりくに言われた言葉を思い出す。

やるせない気持ちと同時に、湧き上がってくるのは…………、憎悪?

私は、髪をかき上げた。
いらいらする。携帯電話をいじる。

あかね
「………………」

そうだ。

もっと、恥をかかせないとなぁ……。